物語に登場する食べ物は、不思議な魅力を持っている。普段食べ慣れているものでも、なじみない異国の食べ物でも、なぜだか実際以上に美味しそうに見えてしまうものだ。さらに物語だからこそ“味わえる”のが、現実世界には存在しない架空の食べ物。決して食べられないからこそ、想像力をフル活用して脳内で味わう楽しみがある。今回はそんなファンタジーグルメのなかからスイーツに注目して、筆者の気になる3品を紹介していこう。
■ほろほろしゅわしゅわな食感が魅力『トリコ』シャボンフルーツ
はじめに紹介するのは、『トリコ』に登場する「シャボンフルーツ」。本作は『週刊少年ジャンプ』の2008年25号から2016年51号まで連載されていた作品で、主人公である美食屋・トリコと料理人・小松が未知の食材を求めて旅するファンタジー×グルメ漫画である。ふぐ鯨や虹の実、宝石の肉(ジュエルミート)など、架空の食材が数多く登場し想像力をかきたてられる。
シャボンフルーツはその名の通り、シャボン玉でできたフルーツだ。“食義”(食にまつわる礼儀作法)を修得するための寺・食林寺の寺宝であり、入手するためには食義を極めなければならない。並の人間では目にすることすらできないレア食材なのである。
シャボンフルーツはそのまま食べることができ、噛むと口の中でほろりと砕ける。しゅわしゅわとした炭酸の刺激も特徴のひとつで、現実世界の食べ物で例えるならシャンパンゼリーのような味だという。見た目はキラキラと輝いていて、幼い頃飛ばして遊んだシャボン玉をそのまま大きくしたような感じ。かつて「もしシャボン玉が食べられたら……」と想像をめぐらせた(筆者のような)食いしん坊にとっては、まさに夢のようなフルーツである。