■理想の上司と言えばこの人! 偉大な「青い巨星」の受けた苦難
続いては、ちょっと視点を変えて『機動戦士ガンダム』に登場したジオン軍のランバ・ラル大尉に注目してみたい。ランバ・ラルといえば「ザクとは違うのだよ、ザクとは」の名言で知られるグフに乗っていた軍人。アムロの人間的成長を促すきっかけとなった、ジオンの名パイロットという印象が強い。
だが、少し俯瞰で彼の置かれた状況を見てみると、なかなかの苦労を強いられていたことに気づく。このとき彼の直属の上官はドズル・ザビ中将で、弟のガルマの仇討ちの任を命じられてラルは地球に降下する。
ホワイトベース隊と交戦したが、結果的にランバ・ラルの部隊は返り討ちに。このときラルは、オデッサ方面軍司令官のマ・クベ大佐に救援を求めるが、マ・クベはキシリア派閥の人間。ドズル派(実際は親ダイクン派に属していたので、ザビ家のドズルにそこまでの忠誠心はなかったが)のラルを助けるはずもなく、救援依頼をあからさまに握りつぶした。
結局、救援を諦めたラルは、わずかな戦力でホワイトベースに再度挑むことに。しかも突入したホワイトベース内部で、自分がかつて仕えたジオン・ズム・ダイクンの娘アルテイシア(セイラ・マス)と遭遇。それをきっかけに負傷し、最終的に自決という悲しい手段で散った。
ようするにザビ家内部の政争に巻きこまれるかたちで任務を果たせず、結果的に命を落としたランバ・ラル。威風堂々とした老戦士といった風貌だったが、実はまだ35歳……。劇中で描かれていない裏側では、もっといろんな苦労を重ねていたのかもしれない。