■欲にハマって抜け出せなくなる負のスパイラル

 最後に紹介するのは「デビルカード」という回だ。ドラえもんが隠していた「デビルカード」というひみつ道具を勝手に使ってしまったのび太は、その道具から出てきた悪魔と300円もらえる代わりに1ミリ背が低くなるという取引をかわす。

 最初はおそるおそるお金を出していたのび太だが、だんだんと欲に溺れて大胆にお金を使ってしまい、周囲の人間も勝手にこのカードでお金を出したこともあって、しまいにはのび太の身長では足りずに体が消滅する危機を迎えてしまう。

 この話は人間の強欲さが顕著に描かれ、借金で取り返しのつかない状況に陥っていく様を見ているようでとても怖い。悪魔も、最初に現れたときはやけにフレンドリーだったのに、のび太が泣きついても絶対助けてくれないところに妙なリアルさを感じた。


 愉快な話や、ほっこりさせられる回だけでなく、いろんな方法で“怖さ”も教えてくれた『ドラえもん』。それも意外と考えさせられる内容だったり、現代の闇をさまざまな角度から描いたりしているのも興味深い。大人なってから再度読み返したら、異なる受け取り方のできるエピソードがほかにも見つかるかもしれない。

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