■一瞬で相手を消してしまう危険すぎる道具

『ドラえもん』の恐怖エピソードとして有名なのが「どくさいスイッチ」の回だ。ジャイアンにイジメられたのび太は、「あいつさえいなけりゃ……」と愚痴る。するとドラえもんは、気に入らない人物の存在を跡形もなく消す「どくさいスイッチ」というひみつ道具を手渡した。

 いくらイジメられたとは言え、人を消すという行為に抵抗を感じるのび太だが、再びジャイアンに殴られたときにスイッチを使用。これでジャイアンの存在は世の中から消滅する。さらにスネ夫の存在も消したのび太は、やけになって「だれもかれも消えちまえ」と言った拍子にうっかりスイッチを押してしまい、のび太1人しかいない世界になってしまう。

 自分のしでかしたミスに気づかないのび太だが、次第に自分以外の人間が世界から消滅したことに気づきはじめる。しばらく自由を満喫しながらも、日が暮れて孤独を実感するとともに心細くなり、しまいには泣き出してしまう心境の変化がやけにリアルで、子どもながらに恐ろしさを感じたエピソードだ。

■家に帰れなくなる怖さを痛感したエピソード

「家がだんだん遠くなる」というエピソードも、子どもの頃に読んで恐怖を感じた回の1つ。ドラえもんが捨てようと思っていた「すて犬ダンゴ」というひみつ道具を、のび太が誤って食べてしまう。これを食べた相手は、二度と家に帰れなくなるという効果があった。

 それなのに、うっかり外に出てしまったのび太は案の定家に帰れなくなる。ひみつ道具の効果で、お巡りさんに間違った方角を教えられたり、のび太自身も住所を忘れてしまったりと散々な目にあうのだ。

 そして唯一の頼みであるドラえもんまでのび太の捜索を諦めてしまうのが悲しく、空腹ののび太が一人ぼっちで夜道を歩くシーンがやけに怖かった印象が残っている。

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