■遺伝子操作で生まれた「コーディネーター」

『機動戦士ガンダムSEED』には「コーディネーター」と「ナチュラル」という言葉が存在。「ナチュラル」は文字通り自然に生まれ育った人間を指し、「コーディネーター」は遺伝子操作を行い、常人よりも優れた能力を持つように「調整」された人間である。

 とは言えコーディネーターには、先に紹介したXラウンダーやイノベイターのような超能力じみた特殊な力はない。通常より学力や身体能力の成長が早く、病気に対する耐性が高いといった傾向がある感じだ。

 総じてナチュラルよりスペックが高い人間が多く、MSの操縦においてもその差は現れるが、作中では絶対的な差というワケでもない。ナチュラルにもコーディネーターと同等以上の能力を持つものもいて、ラスボスのラウ・ル・クルーゼはコーディネーターだらけのザフトで、ライバルを押しのけてエリート街道を歩んでいる。

 その設定だけ聞くと、“調整された”優れた能力を持って生まれてくるコーディネーターは魅力的に思える。しかし、この遺伝子操作は人の生命を扱う技術だけに、完全に制御するのは難しいらしく、作中でもコーディネーターとして生まれてきた我が子を見た母親が「目の色が違うわ!」と叫ぶシーンがあった。短いセリフながらいろんな背景が想像できてしまい、『機動戦士ガンダムSEED』の世界の闇を感じざるを得ない。


 宇宙世紀の「ニュータイプ」を筆頭に、こういった特別な能力を有する存在は物語のキーとなっている。その能力に振り回されるキャラクターたちの心情などを考えるのも『ガンダム』シリーズの大きな魅力と言えるだろう。

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