■綺麗な目の奥にひそむ狂気、ウイルクの底の知れなさ
最後にアシㇼパの父親であるウイルクのヤバいエピソードについて紹介する。かつてアイヌの仲間とともに金塊を集め、和人へのクーデターを計画していたウイルク。しかし同じく金塊を追っていた鶴見の策略によって仲間割れが起きてしまい、ウイルク以外のメンバーがそれぞれ殺し合うことになる。
仲間たちは全滅し、現場に転がっていた生首のなかにはウイルクのものもあった。しかしよくよく見てみれば、どの頭部も目玉をくり抜かれ、皮をむかれるという異様な状態になっていた。
なんとウイルクは自分の死を偽装するため、自分の皮の肉を剥ぎ別人の頭に被せるという、考えるだけでおぞましいことをやってみせたのである。ウイルクは殺し合いに関与していないが、現場や状況をみれば彼が疑われるのは必然だった。アシㇼパが殺人者の娘となり仲間内で迫害されることを避けるために、彼は自分が殺された側の人間だと見せかけなければならなかったのであろう。
しかしいくら覚悟があるとはいえ、自分で自分の顔の皮を剥ぐなどという行為は、並大抵の人間にできることではない。そもそもその計画を考え出すこと自体が異常だろう。しかしそれを思いつき、平然と実行に移してしまうのがウイルクの恐ろしいところだ。
敵味方問わずヤバい人間が登場し、衝撃的なシーンが続々と出てくることでも知られる『ゴールデンカムイ』。今回はそのなかから3つのトラウマシーンを紹介したが、これはほんの一例。ぜひ実際に本編を読んで、本作がいかにぶっ飛んだ作品であるかをその目で確かめてほしい。