■この世は弱肉強食……可愛いシマエナガの受難
続いては、作中によく登場する「弱肉強食」という言葉を体現するかのようなエピソード。コミックス第23巻第228話にて、杉元とアシㇼパ、白石の3人は、脱獄囚の海賊房太郎という人物を探して空知川にやってきていた。その途中、霧が出てきたうえ羽を怪我した小鳥・シマエナガに気をとられ、杉元は2人とはぐれてしまう。
見かけによらずカワイイものが好きな杉元は、シマエナガを肩に載せ行動し始める。しかし霧が深すぎたため、暖をとりつつアシㇼパが見つけてくれるのを待つことに。自分の食べ物をシマエナガにあげたり、アイヌ語でシマエナガを指す「ウパㇱチㇼ」から取って「ウパシちゃん」と命名したりと、微笑ましいやり取りもあった。
しかし1週間たっても霧は晴れず、食料は尽き杉元にも限界が来る。それでも「俺は不死身の杉元だ!!」といつもの名言を叫ぶ彼だったが、一瞬の間の後、「ふいいいいい~~ ごめんなさいごめんなさい…」と言いながらウパシちゃんの羽をむしり焼鳥にしてしまうのだった。このときの杉元の顔は極限状態のためか、かなり血走っていて、その表情の恐さも相まってなかなかトラウマになるシーンだった。
しかも直後、杉元がウパシちゃんだったものを食べようとしたその瞬間、アシㇼパの声が聞こえてくるというなんともいえないオチもついている。
杉元がやったことは残虐行為ではないし、生きるためには仕方がないことだ。しかしそれ以前にシマエナガのかわいさが存分に描かれていただけあって、この調理シーンは地味につらかった。