『鋼の錬金術師』読めば読むほど味のある名コンビ3選 「リン&グリード」「マスタング大佐&ハボック」そして「スカー&メイ・チャン」の凸凹コンビも!の画像
ガンガンコミックス『鋼の錬金術師』(スクウェア・エニックス)第9巻・書影より

 連載完結から10年以上が経過した2022年に、実写版映画の『完結編』2部作が公開された、荒川弘氏によるダークファンタジー漫画『鋼の錬金術師』。天才錬金術師であるエルリック兄弟が、失ったものを取り戻すための旅が描かれた物語である。

 多彩なキャラクターが登場する作中には、物語の主役であるエルリック兄弟「エドワード&アルフォンス」や「ロイ・マスタング大佐とリザ・ホークアイ中尉」など、コンビでの活躍が目立つ組み合わせも多い。そこで今回はそんなメジャーなコンビ以外で、個人的にすごく魅力を感じた2人組を紹介していこう。

■利害関係から始まり、やがて“相棒”と呼び合うに至った「リン&グリード」

 まず最初に紹介するのは、シン国の皇子であるリン・ヤオと、「強欲」を司るホムンクルス(人造人間)であるグリードのコンビ。といっても、彼らは2人で1つの体を共有するという特殊な状態になってしまったため、見かけ上は1人の人間である。

「お父様」によって体内に賢者の石を注入されたことで、リンは強大な力を得ると同時にグリードに体を乗っ取られてしまった。しかし彼の精神は完全に消えておらず、内面世界でグリードとやり取りをしたり、隙あらば体の主導権を取り戻したりもする。いわば体を奪い合うような状態にあったわけだが、その奇妙な共同生活(?)を送るうちに情が湧いてきたのか、いつしか互いに「相棒」と呼び合うような関係性になっていく。

 最終決戦で「お父様」に吸収されそうになったとき、グリードは自分だけが犠牲になることを選ぶ。このときグリードは自身の信条を曲げ、リンだけでも生き残らせるために「最初で最後の嘘」をついた。必死で引きとめるリンに「一緒に闘おうぜ、相棒」と言って油断させ、だましうちのようなカタチで無理やりリンの体から抜け出したのだ。

 そしていよいよ消滅する間際、グリードはリンのことを「魂の友」と呼んだ。はじめは利用しあう関係だった2人が絆を深め、互いのために必死になる姿に胸がアツくなった。

 すべてが終わった後にリンは、シンの帝位についたあかつきには、後継者争いで敵対していた他家の人間も全員受け入れることを宣言した。ライバルの1人だったメイ・チャンから「強欲すぎよ」と言われた彼は、「あいつのがうつったのかもな」と頭をかいた。グリード亡き後も、リンの中には彼の影響が残り続けることが感じられる、グッとくるシーンだ。

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