■ほほ笑ましい気持ちになる凸凹コンビ「スカー&メイ・チャン」
最後に紹介したいのは、国家錬金術師を殺して回っていたアウトローのスカーと、シンの皇女であるメイ・チャン。本来であれば接点の持ちようがない2人だが、スカーと一緒にいたヨキが行き倒れのメイを保護したことをきっかけに、行動をともにするようになる。
突っぱねられても気にせずグイグイと近づくメイに、スカーがほだされるカタチでいつの間にか仲間になった。ゴツくて無口で陰鬱なスカーと、小柄で明るく笑顔が多いメイは、何かと対照的。しかし、2人の相性は意外と悪くなかった。
戦闘能力は2人ともかなりのもので、地下空間で合成獣(キメラ)と戦う場面では、どんどん湧いてくる化け物を息ぴったりで片づけていく。作中では傷を負ったスカーをメイが治療をしたり、「スカーさんは悪い人じゃありませン」とエドに噛みつくシーンもある。
スカーもメイのことは憎からず思っているようで、弱体化したエンヴィーを捕まえた際には「これを持って国へ帰れ」と伝えている。彼女がシン国の継承者争いの真っただ中にあり、ホムンクルスが持つ賢者の石を持ちかえれば彼女の一族が生き残れると考えたのである。
来たる最終決戦にメイの力があれば助かるはずなのに、「この国の事はこの国の人間でなんとかする」と突き放すスカーの言葉からは、彼女に対する思いやりと優しさがうかがえた。
年の離れた兄妹のようで、けれど持ちつ持たれつの対等な関係にあるスカー&メイのコンビ。体格や見た目の差も相まって、一緒に行動しているシーンを見るだけで、どこかほほ笑ましい気分にさせられる。
数多くの名コンビが描かれていた『鋼の錬金術師』。今回紹介した行動をともにするコンビのほかにも、一瞬だけ共闘した即席コンビも含めれば、かなり幅広い組み合わせが楽しめる。さまざまな2人組の相性に注目しながら作品を読んでみるのもオススメだ。