■「思い」が届かなくとも「思い」続けた女性

 そしてマァムから思いを寄せられていたヒュンケルは、パプニカ王国の三賢者のひとりであるエイミにも惚れられていた。エイミとヒュンケルの関係性はかなり複雑である。ヒュンケルはかつてパプニカを滅ぼした魔王軍不死騎団を率いていたからだ。

 そのため物語の終盤に差し掛かる頃にエイミは「最初は…恐ろしい人だと思っていました」と本音を吐露するも、本当のヒュンケルは純粋な心の持ち主であることに気づいたと語る。作中でヒュンケルの強さを称える人は多いが、エイミはひたむきに彼の心と向き合った数少ないキャラだったのではないだろうか。

 そんなエイミだが、傷ついたヒュンケルが戦いに行けないよう彼の武器を隠したことがある。世界の命運を担うダイたち一行、それをサポートする彼女の立場に反する行動だ。

「あなたが好きなの!!!」とエイミが泣いてすがっても戦いに行こうとするヒュンケルだったが、その胸の内を明かすと「はじめてだ…あんな話を他人にしたのは」「ありがとう…」と感謝を伝えた。そして自分のことは忘れた方がいいと告げ、戦場へ向かうのだった。

 他キャラに比べるとグッと大人な感情をさらけ出していたエイミ。「一緒に地獄へ堕ちますっ…!!」などエイミならではの名言も多い。

『ダイの大冒険』ではさまざまな愛が散見される。強大な魔王。世界の危機。こんなにも重い宿命を背負わされながら勇者が戦い続けられるのは、多くの愛で支えられ、彼らも大きな愛を持っているからだ。本作が30年以上も支持され続ける理由とは、そんなキャラたちをファンが愛し続けているためかもしれない。

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