『鋼の錬金術師』は、荒川弘氏によるダークファンタジー漫画。2001年から2010年まで『月間少年ガンガン』で連載され、天才錬金術師エドワード・エルリックとその弟アルフォンス・エルリックが、世界を支配しようとする強敵の人造人間(ホムンクルス)たちと戦う姿が描かれている。
本作にはホムンクルスをはじめ、数多くの悪役が登場するが、中には「やっていることは最悪なのになぜか憎めない」という不思議な魅力を持った者もいる。今回はその中からとくに印象的な3名を取り上げ、それぞれの魅力について紹介していく。
■食いしん坊で子どもっぽいマスコット的なキャラ「グラトニー」
『ハガレン』における憎めない悪役の代表格といえば、「暴食」を司るホムンクルスであるグラトニーだ。体形が丸っこく、目や鼻もシンプルな丸で描かれている彼は、どことなくマスコットキャラ的な雰囲気がある。言動は幼い子どものようで、指をくわえていたり、すぐに食べ物(人間)を食べたがったりするのも特徴。
ホムンクルス仲間に対する親愛の情が強く、リンの体を器にした新生グリードが誕生した際も、「グリード生まれたー おめでとー よろしくー」「おでグラトニー! あっちがエンヴィー!」とはしゃいでいた。
また「色欲」のラストとは、まさに姉弟のような仲の良さで、彼女が殺されたあとはしばらくひどく落ちこんでいた。悪役サイドにいるとは思えない、むじゃきなふるまいを見ていると、思わずかわいく思えてしまうほどだ。
基本的に知能は幼児レベルのため、リンを丸飲みにしようとしてエドとエンヴィーも巻きこんでしまったときには、「おで、どうすればいい?」と敵のアルにアドバイスを求めるなど、少々間抜けな姿を見せることもある。
基本的に素直で、旺盛すぎる食欲さえなければ扱いやすく愛嬌があって良い。見るほどに愛着が湧いてくるグラトニーだが、物語の終盤でホムンクルス仲間のプライドに食べられてしまうという最期を迎える。食べないでと懇願しつつ、「たすけて……ラスト…」ともう存在しない相手に助けを求めた姿がかわいそうだった。