■テンションが高すぎる殺人鬼「バリー・ザ・チョッパー」

 次に紹介するのは、アルと同じく鎧の体を持つバリー・ザ・チョッパー。彼は生前23人を惨殺した罪で捕らえられたが、賢者の石の実験をおこなう「第五研究所」を警備することを条件に、絞首刑を免れる。そしてホムンクルスたちの手で、肉体から剥がした魂を鎧に定着させられた。

 人間を切り刻むのが大好きな殺人鬼というヤバい奴ではあるのだが、性格的にはとにかくテンションが高く、ちょっとおバカっぽい。生前の殺人遍歴を誇らしげに語ったり、人をおどかすのが好きだったりと、コミカルなふるまいも目立つ。さらに偶然遭遇したリザ・ホークアイの強さに惚れ込んでからは、彼女を「姐さん」と呼び、熱烈なラブコールを送っていた。

 鎧の体でありながら表情豊かで、とくに驚いたときの反応はリアクション芸人さながら。顔はガイコツっぽくてゴツく、牙まであるのだが、見慣れるとかわいく見えてくるのだから不思議だ。

■独自の美学を持つ悪のカリスマ「ゾルフ・J・キンブリー」

 最後に紹介するのは「紅蓮の錬金術師」こと、ゾルフ・J・キンブリー。彼は初登場時は刑務所に収監中で、しかも爆発の音を聞いて興奮するという異常ぶりを見せつける。殺人にためらいがない悪役中の悪役ではあるが、彼について特筆すべきはその独特の美学である。

 キンブリーは“信念”を何よりも大切にしており、たとえ自分と相容れない考え方であろうと、信念を貫き通す人間を尊重する。作中の例で言えば、帰国要請に背いて戦場でイシュヴァール人を助け続けたロックベル夫妻や、不殺のポリシーを貫くエドのことも認めていた。こうした寛容な部分というか、ある意味偏った見方をしないところが彼の魅力の1つである。

 そんな彼自身の信念は、殺しという「仕事」を美しく完璧に遂行すること。かつてイシュヴァール殲滅戦で「貴方が殺す人々のその姿を正面から見ろ」「そして忘れるな」と語っていた通り、殺した相手の顔はすべて記憶しているというのも彼の流儀だ。

 真っ白なスーツとコート、帽子という紳士然とした見た目も相まって、最初から最後まで悪のカリスマといった風格が感じられるキャラクターだった。


『鋼の錬金術師』に登場するキャラクターは、それぞれ愛嬌があったり、人間味があったり、一本筋が通っていたりと、どこかしらに愛すべきポイントを持った者ばかりだ。それは主人公サイドに限らず、悪役サイドにも当てはまるのも同作の面白さと言えるだろう。

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