■誇り高き「竜の騎士」が見せた息子への思い
最強父の「死」というのは、少年漫画での息子の成長のきっかけになる重要シーンだ。続いては、現在テレビアニメが最終決戦に突入し盛り上がりを見せている三条陸氏・稲田浩司氏による漫画『DRAGON QUEST-ダイの大冒険-』より、主人公ダイの父親にして正統な竜の騎士バラン。
ハドラー率いる魔王軍の中でも最強と名高い"超竜軍団"の団長を務め、竜騎将としてダイたち勇者一行の前に立ちふさがった強敵バラン。彼は生き別れとなった息子ディーノ(ダイ)に父であることを告げると、ともに人間を滅ぼすことを求める。
それぞれの正義を主張し互いに相容れられない親子であったが、「魔宮の門」破壊のためダイとバランは共闘することに。しかし、門の向こうで待つハドラーの身体には、大陸をも吹き飛ばす黒の核晶(コア)が埋め込まれていた。有効な攻撃手段を見いだせずにいたバランは、ダイに催眠呪文「ラリホー」をかけ眠らせる。
「…子どもがどう願っても親とは常にこうしてしまうものなのだ」とダイを守るように、全闘気を使い果たして黒の核晶の爆発を押さえ込んだバラン。力なく落下していくボロボロになったバランは、竜の騎士ではなく父親としての姿だった。
死の際に、バランにすがるダイにクロコダインが「“父さん”と呼んでやれ!!」と声をかけたことで、それまで意地を張っていた親子がようやく和解。バランの肉体は滅んでしまったが、父の魂は「双竜紋」として息子へと受け継がれた。
テレビアニメでは第56話「受け継がれる心」で描かれたバランの最期。多くのファンが涙したと思われる、同作屈指の名エピソードだ。