■命尽きても…従者として信念を貫き通したフー
最後に紹介するのは、シン国の皇子であるリン・ヤオに仕える老人フーの最期のシーン。彼は24巻・第99話で、キング・ブラッドレイと激突。重傷を負いながら、主であるリンに助けられる。
戦えなくなったフーを見捨てようとはしないリンと、自国の民すら見捨てようとするブラッドレイ。「あれは俺の目指しているものとはちがう!」と上に立つ者としての意思を示したリンの力強い言葉を聞き、フーは瀕死の状態ながら、なおも戦おうとする。
フーの体を気遣うリンに、「永遠のいとま…頂戴いたす!!!」と答え、フーは決死の自爆攻撃を敢行。この攻撃はブラッドレイによって阻止されたが、致命傷を負ったフーの体ごと突き刺したバッカニアの刃がブラッドレイの体を貫いた。
頼もしいリンの言葉に満足し、潔すぎる死を選んだフー。その散り方に私同様、感極まった方も多いのではないだろうか。フーは最期の瞬間まで主のためを想って行動した、従者の鑑のようなキャラクターだった。なお、彼の「若……王になりなされよ…」という心からの願いが叶ったかどうかは、最終回をもって知ることができる。
魅力的なキャラクターが数多く登場する『鋼の錬金術師』。作中でさまざまな戦いが繰り広げられ、メイン、脇役を問わずに途中退場した者も少なくない。同作では、それぞれのキャラの最期のシーンにも彼らの本質といえる部分が丁寧に描写されていたからこそ、いまだに読者の心に残り続けるのかもしれない。