■圧倒的敗北を味わい、最後は自死を選んだホムンクルス・エンヴィー

 敵である「嫉妬」を司るホムンクルス・エンヴィーが死亡する場面も、また印象深い。彼はコミックス23巻・第93話で、焔の錬金術師ロイ・マスタングたちと一戦交える。

 マスタングにとって、エンヴィーは親友ヒューズを殺した仇であり、だからこそ容赦ない一方的な“攻勢”が繰り返される。憎しみのあまりに我を忘れたマスタングの表情は、とても主人公サイドの人間とは思えないほど恐ろしいものだった……。

 最終的にエンヴィーは瀕死の状態まで追い詰められ、小さく醜い本体を晒す。マスタングは復讐の気持ちだけでエンヴィーの命を奪おうとしたが、部下のリザ・ホークアイやエド、スカーらの言葉によって、寸前のところで思いとどまった。

 こうして怒りを落ち着かせたマスタングを見て、エンヴィーは「あんたらニンゲンはそんな御大層なものかよ!」と喚き散らす。しかし、エドから「おまえ…人間に嫉妬してるんだ」「そんな人間がお前はうらやましいんだ」と指摘されると、初めて自分のことを“理解された”と感じた様子。

 するとエンヴィーは「屈辱の極みだよ…」と言いながら自死の道を選ぶ。最後の最後で自分の本質を知り、そのことを理解してくれる人間に出会えたことは、彼にとって幸せだったのか不幸せだったのか。それはエンヴィー本人にしか分からないことだが、なぜかあの最期の場面がいまだに忘れられない。

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