漫画を読んでいて、いい雰囲気のシーンで突然自身の過去や抱える思いを語り出すキャラクターは、たいてい直後に起きた出来事で命を落とす。「戦いが終わったら結婚するんだ」「こんな夜遅くに誰だ?」「ここは俺に任せて先に行け。すぐに追いつく」などなど……。これらのセリフや行動は俗に「死亡フラグ」と呼ばれ、ある程度漫画を読み込んできた読者にとっては、こういったセリフが出てきた瞬間にそのキャラが死ぬのではないかと身構えてしまうものだ。
古くは1986年の米映画『プラトーン』など洋画でも悲劇を演出する手法として使われてきたこれらのセリフだが、少年漫画においてもそういったシーンは珍しくない。バトル漫画において主人公とともに冒険してきた人気キャラがあるエピソードで死亡。読者に衝撃を与える展開だが、事前にそのキャラがフラグビンビンのセリフを吐いていることがある。
死亡フラグを立ててしまったばかりに彼らの身に訪れてしまった悲惨な結末。今回は『週刊少年ジャンプ』にスポットをしぼり、特に王道的だった死亡フラグシーンを紹介したい。
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記事では『ジョジョの奇妙な冒険』『ドラゴンボール』『ONE PIECE』についてのネタバレを含んでいます。未読の方はご注意ください。
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■二段構えの死亡フラグに、ページをめくる手が震えた
まずは荒木飛呂彦氏による『ジョジョの奇妙な冒険』第5部「黄金の風」より。主人公のジョルノ・ジョバァーナと行動をともにしてきた物語の主要キャラクターの1人、ナランチャ・ギルガは物語の終盤で命を落としてしまう。
ブチャラティの肉体と入れ替わったと思われたラスボスであるディアボロが倒れる姿を見て、自分たちの勝利を確信したナランチャは「オ… オレ… 故郷に帰ったら学校行くよ… 頭悪いって他のヤツにバカにされるのもけっこういいかもな… アツアツのピッツァも食いてえ! ナラの木の薪で焼いた故郷の本物のマルガリータだ! ボルチーニ茸ものっけてもらおう!」と高らかに宣言。「学校」「食べ物」という未来への希望を語り、フラグを二段構えで立ててしまった。
実はディアボロはこのときブチャラティの肉体には入っておらず、時間を消し飛ぶ能力である「キング・クリムゾン」が発動。皆が頭上を見上げた次の瞬間、ナランチャは鉄格子に串刺しにされてしまっていた。
この間わずか30ページ。長く旅をしてきた仲間、それもまだあどけなさの残るナランチャのあっけない死に読者は衝撃を受けた。
アニメでの当該シーンは、スタッフによる泣ける粋な演出がなされており、「他のヤツに〜」のくだりは「そんで… もしフーゴのやつに会えたら頭悪いってまたバカにされるのも… けっこういいかもな!」と、別離した仲間との絆を思わせるセリフに変更。志半ばで命を落としたアバッキオへの言及や、トリッシュに声をかけるセリフも追加され、彼の明るく仲間思いな性格がより強調された。
また原作にはなかった、ネアポリスにいるフーゴの頭上を小型飛行機が飛んでいく描写や、その飛行機がアバッキオが命を落としたサルディニア島を通過する様子も追加され、ファンにとっては涙不可避のシーンとなった。