■大きな挫折を味わったキース・シャーディス
エレンたち第104期訓練兵団の指導を担ったスキンヘッドの鬼教官がキース・シャーディスだ。入団式で、訓練兵のことをヒドイ言葉で罵倒しまくったシーンが印象に残るが、それまでの自分を否定し、真っさらな状態から兵士に適した人材を育てるために必要な過程と説明されていた。
そしてキースは入ってきた新人に熱血指導を行い、報告をもとにかなり的確に兵士としての適正を見抜く場面がある。実はキースは、エルヴィンの前の調査兵団団長まで務めた人物(この頃は髪もあった)で、ハンジが憧れるほどの存在だった。
そこで『進撃の巨人』の第1話を思い出してほしい。壁外調査から戻ってきた調査兵団の1人が、息子が戻らなかった遺族に対して「なんの成果も!!」「得られませんでした!!」と涙ながらに謝罪する場面があった。あの人物こそ、当時調査兵団団長だったキース・シャーディスである。
優秀な部下エルヴィンが頭角をあらわす一方、自身は凡人だと自覚し、指揮官として挫折したキース。物語が進んだあと、旧体制を象徴する存在として暴行を受けたときも、とくに抵抗することなく甘んじてボコボコにされていた。
キースはそんなヒドイ目に遭いながらも、巨人が現れた際には元訓練生を導いて助ける場面があり、最後は若者たちの未来のために散っていく。指揮官としてはエルヴィンのような卓越した才能はなかったかもしれないが、忘れられない上官キャラの1人だ。
今回紹介していなかった中にもいろんなタイプの上官が登場するが、いずれも一癖も二癖もある人物ばかり。完ぺきそうに見えるキャラでさえ、実は葛藤や挫折がしっかり描かれているのも本作の面白い部分なのかもしれない。