■話せる人がいたら未来は変わるかもしれない
過去1年以内に日本で自殺未遂をした人は、推計53万5000人。自殺を考えて実行に及んだ人が、実際の自殺者の約20倍近くいるという現実。これを踏まえると、ふだん遠く感じている「死」が思った以上に身近にあることを実感させられる。
第1話の中で留美が「今みたいに話せる人がいたらちがったのかな…」とつぶやく印象的なシーンがあるが、万が一の時に精神保健福祉士と出会うきっかけがあったら、未来は少し変わるのかもしれない。
「死んだら『本当は生きたかったのに』って後悔することもできないでしょう?」と語った羊介の先輩・真優の言葉が刺さる。
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「自殺」という重いテーマを題材にした本作だが、けしてネガティブな描写ばかりではない。自殺願望のある人、その家族に寄り添いながら、静かに奮闘する「精神保健福祉士」という職業があることを我々に教えてくれる。
こうしたセーフティネットが存在することを把握し、家族や友人、周囲の人が「死にたい」という気持ちを抱くことへの理解を深めていくことが、少しでも悲しい出来事を減らすことにつながる第一歩なのかもしれない。『死にたいと言ってください -保健所こころの支援係-』は、我々にいろんなことを考えさせてくれる作品だ。