ドラゴンに虎、オオカミに最近ではパンダまで。少年漫画にはさまざまな動物をモチーフとしたキャラが登場してきましたが、「牛」といえばどのキャラを思い浮かべるでしょうか? バトル漫画に登場するキャラクターの中には、頭に「牛の角」のような特徴を持つ巨漢キャラクターが多く、強敵として主人公の前に立ちはだかってきました。
そこで今回は、80年代の人気バトル漫画に登場した「牛角キャラ」を紹介し、彼らの存在が主人公たちにとって何を意味するかを、キャラクター論として考察してみたいと思います。
■チャンピオンを神話に導く異界からの使者「バッファローマン」
「巨大な牛の角を持つキャラクター」といえば、やはり『キン肉マン』に登場する「バッファローマン」を無視するわけにはいきません。
「超人オリンピック」2連覇を果たしたキン肉マンの前にあらわれた「7人の悪魔超人」のリーダーバッファローマン。頭に巨大な角を生やしたこのバッファローマンこそが、『キン肉マン』という物語を壮大な英雄神話へと変化させるきっかけとなったエポックメイキングなキャラだったのではないでしょうか。
連載当初の『キン肉マン』は勧善懲悪の巨大ヒーロー物をパロディ化したギャク漫画でした。ドジでダメなヒーロー・キン肉マンが闘うのは(『ウルトラマン』に登場するような)巨大な怪獣や宇宙人であり、後に同作の代名詞となる「超人プロレス」の要素はありませんでした(とはいえ、作者のプロレス好きを思わせる要素は随所にありましたが)。
その路線を決定づけたのは「超人オリンピック」編。
予選としてさまざまな種目が行われましたが、その最終決戦が「プロレス形式」のバトルだったのでした。この大会で、ダメ超人だったキン肉マンは、超人レスラーとしての才能を開花させ、決勝に進出。前回チャンピオンのイギリス超人・ロビンマスクに勝利して初優勝を飾ることになります。
この「超人プロレス」展開は、熱烈な歓迎をもって読者に受け入れられ、以後『キン肉マン』はヒーローギャク漫画から、超人プロレス漫画へと本格的に路線変更することとなりました。
その後、キン肉マンはアメリカ遠征やハワイでの修行、故郷への凱旋などを経て、再び超人オリンピックに参加。ソ連出身のロボ超人・ウォーズマンとの死闘を制して、超人オリンピック2連覇を成し遂げます。
この時点で、『キン肉マン』は大ヒット。チャンピオンとなったキン肉マンが次に誰と闘うのか……読者の期待が否応もなく跳ね上がる中、超人界の頂点に立ったキン肉マンの前に立ちふさがった新たな敵。それが、バッファローマン率いる「七人の悪魔超人編」でした。
当初「悪魔超人」は、あまりのワルさから超人界を追放された「無法者的」な設定でした。しかし話が進むうちに本当に悪の権化「サタン」の手先として描かれていくことになります。
悪魔であれ無法者であれ、彼らが「ガチ」の悪であることは、バッファローマンが行ったある行為によって明らかでした。
えげつなく、非道で、絶大なインパクトを持つその行為。これまでのスポーツマンシップに守られた競技としてのバトルとは全く違う「世界観」の敵がやってきたのです。