■『黒子のバスケ』より霧崎第一・花宮真

 多くの女性ファンを虜にした藤巻忠俊氏によるバスケットボール漫画『黒子のバスケ』。アニメも大ヒットを記録し、作中で登場する「キセキの世代」は2012年の「アニメ流行語大賞」にも選出された。

 そんな同作で、一部のファンから「ゲス宮」の愛称で呼ばれているのが、霧崎第一高校バスケ部主将の花宮真だ。

 作中でも“悪童”という二つ名を持つ花宮だが、中学時代は「キセキの世代」と渡り合い「無冠の五将」と称された優秀な選手でもあった。

 知略と技能に優れた花宮は、試合に勝つことよりも対戦相手が惨めに負ける姿が見たいとうそぶく。そのため、卑劣な作戦やラフプレーで、対戦チームのエースや主力選手を試合のたびに負傷させている。

 特に同じ「無冠の五将」として並び立つ木吉には容赦がなく、高校一年時にはラフプレーで左膝を故障させ、選手生命の危機にまで追い込んでいるのだ。

 審判に見えないよう足を踏む、エルボーなど危険なラフプレーをチームメイトに指示し、「蜘蛛の巣」と呼ばれる攻撃パターンで相手を精神的に追い込むなど、卑劣さとともにその頭脳の高さを見せつけた。

 だが、それゆえ自分の思い通りに行かないときは途端に不機嫌に。ラフプレーを繰り返す花宮に黒子が憤った際にも、こうでもしなければ勝てず苦渋の選択だと語ってみせたすぐ後に、「んなワケねぇだろバァカ」「人の不幸はミツの味って言うだろ?」と言い切った。

 この清々しいほどの外道っぷりに魅了されるファンも少なくない。作品内では多くのプレイヤーから嫌われ、チームメイトにさえ悪寒を抱かせる花宮真。つまり彼こそが、今回のテーマに最も相応しいキャラクターかもしれない。

 勝つことへの貪欲さも大切だが、ルールに則ったプレーにこそ人は感動し、惜しみない拍手を送ることを忘れてはならないだろう。

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