■『はじめの一歩』より八戸拳闘会・山田直道(ハンマーナオ)
いじめられっ子だった幕ノ内一歩がボクシングと出会い、ハードパンチャーとして成長する森川ジョージ氏のボクシング漫画『はじめの一歩』。個性豊かなキャラが多数登場し、数々の名勝負が描かれた同作で、一歩の前にライバルとして立ちはだかった一人がハンマー・ナオである。
彼が放つ「ソーラー・プレキサス・ブロー」は、相手の横隔膜を直接叩く必殺技。その際、一歩のガードを崩すため手のひらで内側からこじ開けるのだが、これはれっきとした“反則技”。しかし、味方陣営である鴨川会長からも「バレない反則は高等技術とも言える」「ハンマー・ナオが巧い そして 小僧が甘いのだ!!」と言わしめてしまうほどだった。
スキンヘッドに眉なし、絞り切った肉体と殺伐とした雰囲気は威圧感さえ感じるハンマー・ナオ。試合前に傲慢な態度を見せはしたが、今の彼を形成するにあたって、実は一歩の存在が大きく影響していたのだ。
ハンマー・ナオこと山田直道は、以前は一歩と同じく鴨川ジムに通う少年だった。日本新人王となった一歩に憧れを抱き、内気な自分を変えるため練習生として入門。初めての後輩でもあった直道のことを一歩もかわいがっていた。
だがその後、親の都合で青森に引っ越し。そしてコミックスでは約21巻後、八戸拳闘会所属のボクサー「ハンマー・ナオ」として一歩の前にあらわれた。ハンマー・ナオは不器用なタイプの選手であるものの、逆境を跳ね飛ばしながら短期間で駆け上り、ついには一歩との対戦にまで辿り着く。
彼がここまで無理をし、己を奮い立たせてきたのには理由があった。相手に打たせるタイプの自分は選手生命が短く、だからこそ憧れていた一歩との戦いを望んでいたのである。
その決意と信念は、反則技とは言え“卑劣”だけでは言い尽くせないキャラクターだろう。