■読者の誰もがなぜ!? と悲しんだキルヒアイス
強キャラの早期退場は読者にとって疑問符が浮かぶもの。「あのキャラが生きていれば?」とその後のあらゆる場面で考えてしまうのはファンなら仕方がないことだろう。
読者だけでなく、作中のキャラにもそう思わせたのが『銀河英雄伝説』の主人公・ラインハルトの親友であるジークフリード・キルヒアイスだ。
少年時代に隣に引っ越してきたラインハルトやその姉のアンネローゼと親しくなり、ラインハルトの無二の親友となったキルヒアイス。彼はラインハルトの優秀な側近でもあったが、命を狙われたラインハルトをかばい、物語の序盤で凶弾に倒れてしまう。
それまでの展開では、明らかにラインハルトの陣営が強すぎて向かうところ敵なしだった。ここから一気に物語が展開したことを振り返ると、戦力の調整のためにキルヒアイスが退場したのではないかとも考えてしまう。
彼の死は、物語にとっても作品ファンにとっても早すぎたのも事実。キルヒアイスの名前はこの後も作中で多く登場し、敵側であるヤン・ウェンリーも「あのジークフリード・キルヒアイスが生きていたら……」と事あるごとに口にするほどだ。作者である田中芳樹氏もトクマノベルズ本伝でのあとがきで、彼の死についてはもう少し遅くするべきだったと証言している。
同作は現在もNHKEテレにて新たにリメイクされたアニメ『銀河英雄伝説 Die Neue These』が放送中。2020年9月にキルヒアイス死亡のエピソードが描かれたことで、「キルヒアイス」がツイッターのトレンド入りに。その衝撃的な彼の死が物語を大きく動かしたとも言えるだろう。
強いのに早期退場してしまったキャラたちはみな、失うのが惜しい魅力的なキャラクターたちばかり。また、退場というではないが『ドラゴンボール』の孫悟空は、髪のベタ塗りの作画にかかるコストを下げるために超サイヤ人化した際に髪が金髪になるという工夫がされていることを『週刊少年ジャンプ』の11代目編集長・中野博之氏が2018年放送の『ノンストップ!』(フジテレビ系)内で明かしていた。作画コストがあまりに高すぎて退場の憂き目にあったキャラ、なんていうのもいそうだ。