■ふりかかった不運が成長のカギに!?
序盤はどことなく粗暴で、人の気持ちの分からないヤンチャな高校生に見えた西村勇は、さまざまな不運を経て、人間的にも大きく成長したキャラクターの一人に思える。高3の夏の試合に敗れたあと、達也に自分の弱い部分や素直な胸のうちを語り、敗因は自分にあると言い切ったシーンは、物語序盤の彼からは想像もできない。
西村のような手強いライバルは、主人公チームが力を結集して倒すのがスポーツ漫画のお約束だと思っていた。それだけに『タッチ』の意外な展開に驚かされたが、逆にあの切ない敗戦があったからこそ、西村勇というキャラクターが一層輝いたのかもしれない。
そして『タッチ』から約30年後を描いたあだち充氏の作品『MIX』には、プロ引退後に母校・勢南高校の監督となった西村勇が登場する。興味のある方は、ぜひこちらの作品もチェックしてみてほしい。