■エドワード・エルリックが錬金術で創り出した「異形の何か」
『鋼の錬金術師』の物語は、エルリック兄弟が錬金術師の間では暗黙のうちに禁じられている人体錬成を行い、亡くなった母親をよみがえらせようとしたところから始まる。
作中では人体錬成でできたものは「人の形をしていなかった」と説明され、錬成に失敗した事実のみが伝えられていたが、第23話「叩け 天国の扉」の中で、そのときの様子が具体的に描写された。
人体錬成を行った代償でエドは左足を失い、弟のアルは肉体そのものを喪失。さらにエドは、残されたアルの魂を鎧に定着させるために右腕まで失うこととなる。
そして、その人体錬成で出来上がったのは、錬成陣の上に仰向けに横たわっていた到底人間とは思えない“異形の何か”。「ヒュー ヒュー」という苦しそうな呼吸音が描かれ、肋骨が露出したような不気味なシルエットを見るだけで恐ろしかった。
■マスタング大佐の親友・ヒューズの死
「焔の錬金術師」ことロイ・マスタング大佐の親友で、戦友でもあるマース・ヒューズ中佐。オールバックに眼鏡、そしてあごひげがトレードマークのいかにもダンディな容姿ながら、妻と娘を溺愛していることを周囲に隠そうともしない陽気な人物だ。
聡明な頭脳を持つヒューズは、誰よりも早く軍上層部が敵とつながっていることを察知。そのことを親友・マスタングに伝えようとしたが、電話ボックスで敵の襲撃に遭う。
ホムンクルスのエンヴィーは自身の能力でマリア・ロス少尉の姿に変身して現れたが、ヒューズは持ち前の洞察力で偽物と看破。即座に反撃に出ようとしたが、エンヴィーが愛妻・グレイシアの姿に変身したことで攻撃をためらってしまい、命を落とすことになった。
ヒューズは、エドたちの関係者の中でも飛び抜けて好感の持てるキャラクターだっただけに、あまりにも残酷な死に様を含めてショックを受けたことが忘れられない。