■巻き物の高さが揃っているか
かっぱ巻き、鉄火巻き、納豆巻き、かんぴょう巻き……など、巻き物の種類はさまざま。江戸前寿司には欠かせない巻き物は、1本を6等分に切って出されることが多い。注目すべきは、この切られた巻き物の高さがきれいに揃っているかだ。
作中、初めて将太が巻き物を切ったとき、この6つの高さが不揃いになってしまい、先輩の小政に激しく叱責されるシーンがあった。「半分に切って、それを3等分するだけ」の作業に見えるが、意外と単純ではない。
和包丁の刃は、片方に刃がついている「片刃」なので、刃の幅の分だけ中心線が右にずれる(右利き用の包丁の場合)。だから中心を狙って切ると、大きさが揃わなくなってしまうという。これをクリアするには、見た目の中心よりちょっと右側を切ることがポイントと紹介されていた。
それを知ってから、寿司屋で巻き物を頼む機会があると、つい高さが揃っているかを見るようになってしまった。ついでにシャリや具が潰れたり、はみ出していないかをチェックしてしまうのも『将太の寿司』の影響である。
包丁に力を入れすぎると断面が乱れ、せっかくの巻き物の味にも影響するという。つまり、すっぱりとした切り口で仕上げてくれる職人は、包丁上手と判断できるわけだ。話は変わるが、巻き物は酒のつまみとしても最高。ぜひ日本酒と一緒に食したい!
お寿司屋に行く機会はそう多くはないけど、職人がテキパキと寿司を握る姿を眺めているだけで惚れ惚れしてしまう。その上で『将太の寿司』で知った技術を覚えていたら、いつもと違った視点で楽しい時間が過ごせるかもしれない。