■伊之助をホワホワさせたおばあさんの天ぷら
続いては、『鬼滅の刃』の嘴平伊之助の心を動かした、藤の花の家紋の家のおばあさんが作った天ぷら。それまで野生児として強さだけを追い求めて生きていた伊之助にとって、人に優しくされることは慣れないことであった。
そんな伊之助が、他人であるおばあさんに温かい寝床や肌触りのいい服を用意されたり、天ぷらを作ってもらったことで、はじめて自分の中に「ホワホワ」した感情を抱く。
アニメではこの天ぷらがなんともおいしそうに描かれており、具材もエビ、サツマイモ、ししとう、レンコン、カボチャ、山菜とかなり豪華で大根おろしにショウガも添えられていた。
コミックス16巻の柱稽古編においては、岩柱による修行のなかで、このときの天ぷらが伊之助を鼓舞する重要なアイテムになっていたのだから、よっぽど思い入れが深かったのだろう。伊之助が生まれてはじめて人から優しくされた、おばあさんの思いのこもった天ぷらを私たちもぜひ食べてみたいものだ。
■号泣必至の「半分コな」
最後は『東京リベンジャーズ』の超重要アイテムであるカップ焼きそばのペヤング。同作は、主人公の花垣武道が恋人の死を防ぐためタイムリープを繰り返すというSFサスペンス要素のあるヤンキー漫画。武道はタイムリープを繰り返すなかで、自身の所属する「東京卍會(トーマン)」と敵対組織「芭流覇羅(バルハラ)」による「血のハロウィン」抗争に巻き込まれる。
抗争の最後、今まさに命の灯火が消えそうな場地圭介は、自身の腹心である松野千冬に「ペヤング食いてぇな」「半分コな」と語りかける。2人がはじめて仲良くなった日に食べたのが、1個を半分ずつ分けあったペヤングだった。
それまでは仲間を守るため、誰にも決意を明かすことなく敵に寝返っていた場地。彼が最後まで、心の底から仲間を愛していたことが感じられるエピソードだ。
場地の死後、千冬は墓前に約束通り半分だけ残したペヤングをそなえて涙を流す。どこでも買えるカップ焼きそばだが、見るたびに少しせつない気持ちになってしまう。
どんなに高級な料理よりも、グッとおいしく感じる思いのこもった料理の数々。このほかにも『転生したらスライムだった件』で、主人公のリムルが味覚を得たあとではじめて食べた串焼きや、『NARUTO-ナルト-』のナルトが大人になっても食べ続けている一楽のラーメンなど、アニメにはそのシチュエーションごと楽しみたい料理が盛りだくさんだ。