■アルセウスのよかったところとダメだったところ

 まず、前提としてアルセウスは「神ゲー」でした。

 安易に使われすぎて少し安っぽい言葉になりつつある「神ゲー」というワードですが、間違いなく面白いゲームです。

 ただ、このゲームが面白かったのは「ポケモンだったから」にほかなりません。私たちが前提としてポケモンへの興味・関心があり、進化させる・捕まえる・戦わせるということの喜びを知っているから、楽しいと思えたんだと思います。もしこれが、新規のキャラクターによる新作タイトルだったとしたら、もしかしたら同じように面白いと感じられたかどうか分かりません。

 たとえば、これまでのポケモンはポケモン図鑑の完成を目指すという目標がありましたが、それはほとんど“飾り”で、結局強いポケモンを育てて四天王やライバル、邪悪な組織を倒すということが大きな目標でした。

 多くの人が、ポケモン図鑑をコンプリートしようと息まいて最初こそ出てくるポケモンをかたっぱしから捕まえますが、徐々に面倒になって伝説ポケモンや強そうなポケモン以外、野生ポケモンとの遭遇をなるべく回避しようとしていたのではないでしょうか。私もそのクチです。

 ところが、アルセウスははじめてポケモンをプレイしたときと同じような「捕まえる喜び」がありました。ボールを投げるというアクションを搭載したことで、実際に自分の手で捕まえている感覚が得られるようになっただけでなく、たくさん捕まえることによって図鑑の捕獲数のタスクが埋まっていくという達成感も大きなポイントだったと思います。

 実際、同じポケモンを孵化させ続けることはあっても、同じポケモンを何度も捕まえることはこれまでなかったので、この点はポケモンというゲームに新たな楽しみ方が生まれたように思います。

 つまり、これまでのポケモンと「違う楽しみ方」に新鮮さがあり、フィールドを走り回って「こんなところにピカチュウ出んの!?」というワクワク感に興奮できたというだけで、そのピカチュウに対する理解がなければ、ここまで面白いとは感じなかったことでしょう。

 良い意見と悪い意見が出てきたのはおそらく、この視点が大きいのではないでしょうか。

 ポケモンへの興味・関心がある人であれば、新しいゲーム性と新たなポケモンの見せ方に楽しみを見いだせるので「面白い!」と感じられますが、そうでない人からすれば「え、ポケモンがただ湧いてるだけじゃん、もっと細かい生態とか違うポケモン同士のふれあい描写みたいなのないの? もっと作りこめるよね?」と感じてしまうのも無理はありません。

 ポケモンが好きな私ですら、「イダイトウに乗っている水上ではボールを投げられるのに、なぜ陸地でアヤシシに乗っているときはボールが投げれないのか」といったUIへの不満がいくつかありました。

 細かな不満を挙げれば、たとえ面白いと感じたゲームだったとしてもいくつか出てきますが、それでも「ポケモンを捕まえる、素材を集めてアイテムを補充・強化して、さらなるフィールドに足を運んで新しいポケモンを発見する」という面白さは、これまでのポケモンでは味わえなかった唯一無二のものです。

「ポケモンスナップ」のようなポケモン同士のふれあいや生態を観察する楽しみ方ができなかったことや、移動方法・ボタン・メニューのUIなどまだまだ改善の余地はあるにせよ、新たなチャレンジをしたタイトルとしては素晴らしい作品だったといえます。

 そしてさらにポケモンの底力を感じたのは、この1か月後に最新作を発表したことです。これはもう衝撃的でした。

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