■『聖闘士星矢』視聴者を驚かせた「エスメラルダ走り」
ちなみにアニメ『聖闘士星矢』には別の意味で視聴者の度肝を抜いた、通称「エスメラルダ走り」というものも存在する。これはフェニックス一輝の過去、デスクィーン島での修行時代を描いた第15話「今あかす! 一輝の謎」でのことだ。
聖闘士になるために世界各地の修行場所に向かわされた星矢たち。一輝の修行場所となったデスクィーン島は赤道直下に位置し、活火山が吐き出す火の雨が一年中降りそそぐ灼熱地獄の島だった。師匠からの苛烈な修行も重なり、地獄の日々を生きていた一輝にとって唯一の心を安らげる相手となったのが、弟・瞬とよく似た容姿の心優しい少女エスメラルダだった。
しかし、フェニックスの聖衣を賭けた師匠との最終対決の最中、悲劇は起こる。師匠が放った拳打を紙一重でかわした一輝だが、打撃の衝撃波は後ろで2人の戦いを見守っていたエスメラルダの胸を貫いてしまう。流れる血で服を染め、一輝の名前を叫びながら倒れるエスメラルダ。一輝も彼女の名前を叫びながら駆け寄るのだが……。次に映るのは「エスメラルダァァァ~~~」と叫びながら奇妙な踊りを踊る一輝の突然の姿だった。
一瞬前のシリアスな流れと随分落差があるこのシーン。改めて見るとどうやら駆け寄ろうとしているのは間違いないが、どう見てもその場で地団駄を踏んでいるとしか思えない。しかも右腕右足、左腕左足を同時に動かし、両手はなぜか前にかざしているという……。この滑稽な動きをする男は本当にあの一輝なのか? 強烈なインパクトを残したこのシーンは、彼女の名前を叫ぶ一輝にちなみ、以降、「エスメラルダ走り」としてファンの間で語り継がれることになるのだった。
それにしても誰が何を思ってこんな振付で一輝に奇妙な踊りを踊らせたのか。つたない動画マンの失敗だったとも考えられ、第15話のスタッフに荒木氏の名前がないことはここに付け加えておきたい。