■加速するマニュアルのフリーダムさ!
テンゲンの取扱説明書が“ヘン”なのは『ハードドライビン』だけではありません。その後リリースされたゲームの説明書では、ヘン具合がパワーアップ。ゲームのパッケージを模した説明書の表紙には、謎のサブタイトルがプラスされているのです。
メガドライブ版『ガントレット』には、「渡る世間に鬼だらけ(ジェネレータのせいだよ)」と、ゲーム内容を揶揄するアオリが追加。『MIG-29』の説明書には「旧ソ猫を噛む」と、ことわざをもじったダジャレのようなサブタイトルがついています。『MIG-29』は、旧ソ連のミグ29に乗って戦うフライトシューティングなので、「猫を噛む」の部分は、おそらくアメリカの“F-14トムキャット”も指しているのでしょう。
同じくテンゲンのメガドラソフト『V・V(ヴイ ファイヴ)』の説明書の表紙には、「V・Vとかけて、うちのパパと解きます」「その心は?」と、いきなり謎かけが記載。ちなみに、その心は……の答えは「とても家庭的(硬ぇ敵)です」「……うまいっ、楽さんに一枚!!」と書かれていました。まさかの『笑点』ネタにビックリです。
■読み物としてもかなり充実した内容!
さらに巻末には、ファンから寄せられた手紙やイラストを紹介する「テンゲンお便りクラブ(仮称)」なるコーナーや、ゲームの開発者からのメッセージが掲載されているなど、説明書とは思えないほど、読み物として充実しています。
プレイヤーに語りかけるような文体で、ちょっとしたおふざけ企画も満載なので、ゲームの遊び方やシステムなどを楽しみながら理解できる点が素晴らしい。かぎりなくユーザーライクに作られた説明書なのかもしれません。
私自身も何本もゲームの説明書を作ってきましたが、テンゲンのマニュアルのノリで文章を書いたら一発でリテイクを出される自信があります。それだけテンゲンのマニュアルが異質で、面白さが際だっているのです。
今はゲームのダウンロード販売が当たり前の時代なので紙の説明書はどんどん少なくなっていますが、個人的には説明書が手元にあれば懐かしいゲームを振り返るのにも便利。再燃しているアナログレコードのように、ゲームの説明書も何らかのかたちで復活してほしいと願っています。