■弟子の心の成長を信じる
アバンの一番弟子は、ポップでもマァムでもなくヒュンケルだ。魔王軍のモンスターに育てられたヒュンケルは、養父である地獄の騎士バルトスを殺したのは勇者アバンだと思いこんでいた。(実際は別の者による犯行だったが……)
アバンに恨みをいだきながら、いつか復讐するためにアバンの下でヒュンケルは力をつけていく。そしてアバンはそんな彼の複雜な気持ちを知りながらも大切に育てあげる。ヒュンケルが心に秘めていた善良な心を信じていたからだ。
誰もが死んだと思っていたアバンは、大魔王バーンとの戦いに際してダイたちの前に現れたが、そのときアバンは「ヒュンケル…あなたが…今、この場に生きて…ダイたちに力を貸していてくれた…」「それだけでもう、私は…私は夢のように幸福です…」と心の中でつぶやく。一時は魔王軍に入っていた一番弟子ヒュンケルが弟弟子たちの支えとなり、一緒に行動していることを何よりも喜んでいた。
ちなみに、養父の死に対する勘違いを知るヒュンケルのほうは、アバンに背を向け「まさに…こういう状況のことを言うのだろうな」「顔向けができないというのは……」と涙を流している。
幼い弟子の表面的な態度にとらわれず、本来の人間性を信じて寛大な心で指導するのも後進の育成に必要なことなのかもしれない。