1980年代から1990年代のレトロアーケードゲームを現代に復刻する、ハムスターによるプロジェクト『アーケードアーカイブス』。2021年10月14日には、1980年11月に稼働を開始したナムコのレースゲーム『ラリーX』がPS4、Nintendo Switch向けに配信となった。
これはシンプルながら、“激辛”とも表現できる難易度で知られたタイトルである。プレイヤーは青いクルマを、まるで迷路のようなコースで走らせる。このコースに点在するフラッグをすべて取ればステージクリアだが、文字で書くほど簡単ではない。複数台のNPC(赤いクルマ)がプレイヤーを追尾し、なんと体当たりを敢行! その他にも燃料や障害物に気をつけなければならず常に注意が必要。見た目以上に難しいゲームだった。
だが、そんな『ラリーX』がゲームセンターの客を虜にしていた時代が確かに存在したのだ。
■レーダーを頼りに効率のいいルートを選ぶ
1980年の日本は、上昇気流に乗っていた。列島を震撼させた石油ショックも過去の話となり、家電や自動車や電子機器、そしてそれらに付随する半導体の輸出は絶好調だった。「いいものはみんな日本製」と誰もが口をそろえていた時代だ。
国が豊かになると、国民も海外の「面白いもの」に目を向けるようになる。そのひとつがモータースポーツの一種、ラリーである。どこまでも続く広大な不整地をクルマで疾走するということは、日本ではなかなかできない。ちなみに、第1回パリ・ダカールラリーは1978年12月にスタートしている。
コンピューターゲームの世界にもモータースポーツを題材にした作品が登場するのは、時代の必然だった。が、以上の背景があったとしても『ラリーX』はなかなかどうしてぶっとんだ内容である。
『ラリーX』は、なぜか追ってくる他の車を回避しつつ、マップ上にあるフラッグをすべて取るというルール。ラリーなのに最速タイムやジャストタイムを競うものではなく、西部警察よろしくカーチェイスをしている。プレイヤーは何か悪いことでもしでかしたのかもしれない。
しかしこのカーチェイスは、頭脳を要求される。画面右側のレーダーには自車、他車、フラッグの位置が表示されていて、それを参考にしながらより効率よくフラッグを取っていく。さらには燃料の概念まであり、あまりモタモタしていると移動速度が極端に低下してしまう。マップの構造を記憶しながら、他車に追いつかれないよう戦略を組み立てなければならないのだ。