「メタ発言」とは、一般的に漫画やアニメ等のフィクション作品の登場人物が、フィクションであることを自覚しているかのような情報や裏話などを発することを指し、ギャグ漫画などでは定番の手法といえる。ただしシリアスな作品の場合、状況によっては世界観や雰囲気を壊しかねないので、読者視点では好みの分かれるところ。
だが、冨樫義博氏は自身の人気漫画『幽遊白書』(集英社)の中でメタ発言を用いている。あるいはメタ発言として受け取れそうな意味深なセリフを効果的に活用しているようにも感じたので、個人的に印象に残っている3つのセリフを振り返りたい。
■幽助の怒りを“メタ発言”で表現!?
暗黒武術会に出場した浦飯幽助たちは「Dr.イチガキチーム」に勝利するも、重傷を負った桑原が戦闘不能。飛影と幻海も治療のため、無理やり次戦欠場を余儀なくされる。結果、幽助と蔵馬の2人だけで「魔性使いチーム」と戦うことになる。
蔵馬は「化粧使い・画魔」「呪氷使い・凍矢」を相手に2連勝するが、戦いの中で大ダメージを負う。幽助が選手交代を申し出るが、幽助チームに勝たせたくない大会本部は蔵馬の交代を認めなかった。
3試合目が始まると、対戦相手の「爆拳」は動けない蔵馬にやりたい放題。サンドバッグ状態の蔵馬を見た幽助は、怒りのあまり大会をぶち壊す覚悟で霊丸をぶっ放す寸前まで追い詰められた。
結局、爆拳は蔵馬を場外負けにして幽助と対戦。汗を霧に変えて身を隠した爆拳の攻撃にも動じず、霧を簡単に消し飛ばすと、幽助は「予告するぜ」「てめーは見開きでぶっ殺す!!」と高らかに宣言した。
この幽助の宣言通り、4ページ後の“見開き”を使って、幽助が爆拳の体に6発のパンチを叩きこんだ完勝シーンが描かれる。“見開き”という漫画であることを意識させる明らかなメタ発言ではあったが、幽助の怒りと強さへの自信を端的に言い表した痛快なセリフだった。