■1996年・有馬記念
作中の舞台は、1996年の「有馬記念」。現実の世界ではマーベラスサンデーを下したサクラローレルが制覇した年になります。
主人公・マキバオーは同年の日本ダービーでライバルの「カスケード」と同着優勝を果たしますが、秋の長距離G1、菊花賞では距離適性の壁に泣かされて4着に敗退。そしてマキバオーと同世代の頂点に君臨する最強のライバル・カスケードも、無敗で挑んだ世界最高峰のレース「凱旋門賞」で敗れ、国内復帰初戦が有馬記念でした。主人公、宿敵がそろって敗れて暮れの大一番に臨むところに、なんとも言えない競馬らしいリアリティを感じます。
さらに悲願の菊花賞を制した「アマゴワクチン」、外国産馬(当時の外国産馬は、皐月賞やダービーなどのクラシックレースに出走できないという背景がありました)ながら日本を代表してジャパンカップを制した「ニトロニクス」は、マキバオーやカスケードと同じ4歳世代(現在の馬齢でいう3歳)です。
そこにひとつ年上の天皇賞馬「トゥーカッター」が登場し、2冠馬カスケードを差し置いて1番人気に支持されます。構造としては4歳馬の4強+5歳馬のトゥーカッターといった関係性で、レース前のパドックから馬同士が揉め、ピリピリとした不穏な雰囲気が漂うのです。
そんな中、運命の有馬記念のゲートが開きます。末脚が武器のマキバオーやカスケードはいつも通り馬群後方につけ、トゥーカッターも後方。アマゴワクチン、ニトロニクスが先行するかたちになります。
マキバオーは菊花賞後に行った特訓の成果もあり、他馬の老練な駆け引きにも動じず、冷静に追走。マキバオーと鞍上の山本菅助ジョッキーが最後の直線に賭ける相談をしている中、かなり早いタイミングで仕掛けたのがカスケードでした。
これにマキバオーもいち早く反応して追撃を開始。アマゴワクチン、ニトロニクスたちと先団を形成し、そこに5歳馬トゥーカッターが満を持して襲いかかります。