■ドラゴンは実質「終了」のおしらせ

 ドラゴンとなったスライムくんは、戦闘もそれなりに強いし、歩けばどんどん地形も変わるので楽しかったのですが、何回振っても、何度敵を倒しても、何を食べてもドラゴンから成長してくれません。

 当時は攻略情報もとくになかったので、グレイトドラゴンやダースドラゴンに進化してくれるのでは夢見て一生懸命育てましたが、結局彼はドラゴンのまま死を迎えました。けっこう進化してくれるゲームで、次はどんな姿形になるのだろうと思って育てていたので、内心「まだこいつかよ」と思っていました。

 のちに知ることになるのですが、実はドラゴンになるともう進化先がなく、このゲームは実質の「終了」となります。そんなことはつゆ知らず、育てては即ドラゴンになり、10日ほどで死を迎え、分裂し、またドラゴンに……というループに陥ってしまい、電池が切れたとき、私の腱鞘炎生活は幕を閉じました。

 初めてバブルスライムになったときに感じた、「はぐれメタルになれるかなあ!?」というワクワクドキドキ感がもう味わえなくなったとき、このゲームは終わってしまったのです。

 そんな僕を切なげな顔で見守ってくれた母は、あのとき何を思っていたのでしょう。淡く切ないそんな思い出ですが、いざ何十年もたってよみがえると、人はなぜか喜び燃えます。

 どうせすぐ飽きてしまう、というあのときの感情はどこへやら、一時の「懐かしい」を求めて人はテンションをブチ上げてしまうのです。Switchにロクヨンがきたときも同様に、懐かしいという思いだけで人は動きます。そして、すぐに冷めます。感情が猛スピードで消費されていくのです。

 それは心のどこかで分かっていました。それでも、私はまたドラクエウォークを再インストールしていました。あるくんですを求めて……。ドラゴンにならない未来を求めて……。

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