■60分の1秒を狙う高速移動技「飛鳥文化アタック」

 初代『スーパードンキーコング』でRTAに挑戦する上で、代表的な技が「飛鳥文化アタック」。この技名は、増田こうすけ氏のギャグ漫画『ギャグマンガ日和』(集英社)で聖徳太子が繰り出した同名の技に由来する。プレイヤーキャラクターのコングたちが前転しながら高速で空中を飛んでいく姿が、「飛鳥文化アタック」にそっくりだったためだ。

『スーパードンキーコング』における飛鳥文化アタックを成功させるには「敵を踏む」、「ローリングで倒す」という2つの判定を、同時に発生させなくてはならない。

 この技における同時判定の猶予は、1フレーム(60分の1秒)と言われている。フレームというのは映画やアニメにおける“コマ(静止画)”を指し、1秒間に表示されるフレーム数が多いほど、それだけ映像が滑らかに映し出される。

 パラパラ漫画を想像すると分かりやすいだろう。同じ動きを描写するにも10ページ分と100ページ分のパラパラ漫画では密度がまるで違う。枚数が少なければ一部省略しなければならないし、逆に多ければ細かな部分まで描き出せるというしくみだ。

 話を「飛鳥文化アタック」に戻すと、まずアルマジロのような敵を一度ローリングで無力化。近づくと自動で“踏む”判定が発生するので、そこにローリング攻撃の判定を合わせる。

 この同時判定に成功すれば「飛鳥文化アタック」が発動。コングはローリング状態のまま無限に飛び続け、発動中は左右に動くことも可能となる(ジャンプボタンを押すと解除)。RTAの挑戦者は、この超絶技を当然のように攻略に組みこんでいたりもするのがすさまじい。

 ちなみに同時判定の猶予とされる1フレーム(60分の1秒)は、0.016秒に相当する。人間の反応速度は0.1秒が限界とも言われており、0.016秒など狙って出せるレベルではない。もはや感覚をつかむしかない境地で、私が1時間ほど練習し、成功したのは数えるほどだった。

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