■実は禰豆子が決死の思いで耐えていた「稀血」の誘惑
最後は、コミックス3巻に登場した「稀血」の存在。稀血とは、普通の人間の50人から100人分に値する貴重な血。鼓屋敷編では稀血を持つ清という少年が鬼に連れ去られてしまった。しかし炭治郎らの善戦により、清は無事生還。今後稀血に集まってくる鬼を避けるため、鬼除けである藤の花の香り袋を鎹鴉から受け取り、弟たちとともに自分たちの家へと帰ることができた。
これ以降長く語られることのなかった稀血の設定だが、読者もこの設定を忘れかけていたであろう19巻で、風柱・不死川実弥が稀血を持っていることが明かされた。
しかも、不死川の稀血は特に希少なもので、血を流すだけで鬼を酩酊させるほどの効果を持つ。不死川は鬼殺隊に入る前から自分の体を傷つけ、血を流すことで鬼をおびき寄せて戦ってきたために身体中が傷だらけだったようだ。
コミックス6巻の柱合会議では、不死川が自身の血を差し出して禰豆子を試す場面がある。この時点では不死川が稀血の持ち主であるという設定は明かされていないが、あらためて読み返すことで、禰豆子がただの人間の血ではなく稀血の誘惑さえも耐える強い精神力を持っていたことが分かるシーンとなっている。
このほか、握る人によってその刀身の色を変えるといわれている日輪刀が、炭治郎が握るとどの呼吸にも適性を示さない漆黒になったことも当時の読者の間で考察が交わされていた。
これは、実は誰にも知られていなかった「日の呼吸」の適性があったためだという物語後半のエピソードにつながる設定だが、こうしたサラッと描かれた場面が後の重大なフラグになっているというのが『鬼滅の刃』のすごさ。これも物語本編には描ききれないほど大量にある吾峠氏が用意した設定の分厚さゆえ。一度読み返してみれば、新たな発見があるかも?