■あながち嘘ではない内容
たったひとりないしふたりで敵の大軍に殴り込み、最終的に悪の親玉を打倒する。一見すれば破天荒な内容だが、実は『ゲバラ』は頭を使うゲームでもある。敵がより強力な武器を落とすことは先述したが、火炎放射器やグレネードランチャー等はステージとの「相性」というものがある。要所要所に適した武器を瞬時に見いだすことは、優秀な革命戦士の条件である。
また、「ゲバラとカストロがたったふたりで戦車まで持っている軍隊と戦う」というゲーム設定は、実はそれほどぶっ飛んでいるものではない。なにしろ、バティスタ政権時代のキューバはアメリカから豊富な武器を提供されていたのだから。バティスタが大軍で革命軍を攻撃していたこと自体は、歴史的事実である。が、勇敢な革命戦士であるゲバラとカストロは、敵から武器を奪いながらキューバの首都ハバナへ進撃していく。そしてついに、バティスタが鎮座する大統領宮殿までやって来た!
最終決戦のバティスタは、なんと大統領宮殿に砲台を設置して革命軍を迎え撃つ。史実では1959年の到来を祝う新年パーティーで突如辞任演説を行い、そのまま飛行機で国外逃亡してしまうのだが……。まあ、ここで細かな史実など問答無用である。ともかく、バティスタは恐るべき兵器を用意してゲバラを待ち構えている! 革命戦士よ、ひたすら手榴弾を投げて投げて投げまくって砲台を爆破せよ!
■海外版では固有名詞が伏せられる
なお、この『ゲバラ』は海外へ輸出もされている。しかしさすがにキューバ革命を絶賛する内容はまずかったらしく、海外版は固有名詞が伏せられている(ゲームシステムに変更なし)。
いずれにせよ、『ゲバラ』はアーケード版もファミコン版も素晴らしい出来栄えだった。題材にした事象や実在の人物(このゲームが稼働した当時、フィデル・カストロは現役バリバリのキューバの最高指導者だった)へのリスペクトも感じられる、シューティングゲームの傑作と言えよう。