■幾原邦彦監督による美しすぎる「手」

 そして、『S』では第21話「ウラヌス達の死? タリスマン出現」が外せない。この回の演出担当は『少女革命ウテナ』で知られる幾原邦彦監督だ。

 この回ではネプチューンがウラヌスをかばって敵に囚われ、なおもウラヌスを助けるためにあらがい、ついに倒れてしまう。また、ずっと探し求めていたタリスマンが己の中にあると知り、さらにネプチューンを失ったウラヌスは「ずるいじゃないか、みちる 自分だけの世界に行くなんて」とつぶやきながら自らの胸に銃を向けるという衝撃の展開を迎える。

 最後までお互いを思い合って散るウラヌスとネプチューンの伝説の回として有名なこの回では「手」の演出が作品のエモさを助長している。

 物語の序盤では、敵に誘い出されたはるかとみちるが戦いを前に手を絡み合わせ「私はあなたの手が好きよ」と静かに語り合うシーンが何カットも流れる。そして本拠地にたどり着くと、「ここから先は互いの危険は無視して一人で先に進むのよ」と決意をし、一瞬手を触れ合わせるも、その手を離すシーンが挟み込まれるのだ。

 セリフで愛を語るよりも、こうした印象的なカットで二人の心情を語る演出の細かさと、結局は一人で先に進むという選択ができなかった二人の深い愛が多くの視聴者の涙を誘った。

『セーラームーン』には、このほかにも今でも心にグッと響くオシャレな演出が多く用いられている。大人になった今もう一度見てみると、昔は気づかなかった作品の新たな魅力を感じるかも?

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