1992年から1997年まで放送され、社会現象にもなったアニメ『美少女戦士セーラームーン』。キャラクター造形や大人っぽいストーリー展開など、随所に少女たちが憧れる独自のセンスが光っていた作品で、毎週夢中になって見ていたという人も多いはず。
2014年からは『美少女戦士セーラームーンCrystal』というタイトルで再度アニメ化され、今年11月13日からは神奈川県相模原市のアウトドア複合リゾート「さがみ湖リゾート プレジャーフォレスト」で、世界初となるコラボイベント『美少女戦士セーラームーン イルミネーション-Eternal-』が実施される。放送から30年近くたった今でも変わらぬ人気を誇っている作品だ。
今回は、そんな『セーラームーン』の中から、令和の現在でも心がときめいてしまうような「エモい」演出が光ったエピソードをいくつか紹介したい。
■切なすぎる敵幹部との恋
まずは「無印」と呼ばれる初期シリーズから、第24話「なるちゃん号泣!ネフライト愛の死」。
このころ、セーラー戦士はまだムーン・マーキュリー・マーズの3人しかそろっていない。しかし物語はそれまでのコメディ路線から一転、衝撃的なシリアス展開を迎える。随所にわたって大人っぽいセリフ、演出が採用されたエピソードだ。
主人公・うさぎの親友「なるちゃん」が恋した大人の男性・三条院正人の正体は実は敵幹部の「ネフライト」だった。ネフライトは、なるちゃんを利用して銀水晶のありかを探し出そうと彼女に近づいていたが、その過程でついなるちゃんを妖魔から助けてしまい、自分のとった行動にとまどいを見せる。
自身の感情に答えが見つからないまま、なるちゃんが同じく敵幹部であるゾイサイトの手下の妖魔に誘拐されてしまうと、ネフライトは彼女をかばって致命傷を負う。なるちゃんとデートに行く約束を交わし、ネフライトが本心からの笑顔を見せたすぐ後のこのシーン。最後はなるちゃんの腕の中で、今まで嘘をついていたことを彼女に謝りながら死んでしまうという切ないストーリーだ。
主人公の親友と敵幹部による禁断の恋愛は、とても少女向けとは思えない結末を迎えた。致命傷を負い「すまない、チョコレートパフェ食べられそうもない……」「最後まで嘘をついてしまったな」とデートの約束が果たせないことを謝り、息を引きとったネフライト。すべてを察するなるちゃんの表情が悲しすぎる、胸が締めつけられるシーンだ。
この前日にネフライトはなるちゃんに自身が敵であることを明かし、「君にだけは嘘をつきたくない」「君のおかげで私は初めて愛というものを知った」と打ち明けているが、これがセーラームーンを誘き出す作戦ではなく、どこかに彼の本当の気持ちがあったことを願ってしまう。ハッピーエンドで終わらない悲しい愛が2話にわたってじっくりと描かれたファン人気の高い神回だ。
なおこれはアニメオリジナルの展開で、原作漫画ではネフライトはセーラージュピターとの戦闘の末倒されている。