■人間時代の姿を想像させる鬼たち

 実際の兄弟ではないが、善逸と兄弟子である獪岳(かいがく)の関係も、どこかいびつだ。ともに孤児であった善逸と獪岳は元鳴柱のもとで鍛錬を重ね、二人で共同での後継者となるはずだった。

 しかし獪岳は最終的に、嫉妬にかられて鬼になってしまう。自分だけが特別でないと気がすまない獪岳と、獪岳が鬼になったことで覚悟を決めた善逸には悲しい別れが待っているのだが、公式ファンブックによると、獪岳自身は剣士であることに固執しているので日輪刀を模した刀で戦っていたという。

 炭治郎らが優しく他人に親切なため異質に見えるかもしれないが、獪岳のプライドの高さや虚栄心は、ありふれた一人の少年の年相応のものなのかもしれない。

 この他にも、物語序盤に登場した最終選別の手鬼は、手がたくさん巻きついている印象的なビジュアルをしているが、これは過去の思い出から来ている。怖がりで兄に手をつないでいてほしいと願う少年だった手鬼は、鬼となった後にその兄を食い殺してしまった。この鬼は、まるでいつまでも兄が手を引いてくれるのを待っているような、どこか悲しみを感じさせるデザインだ。

 鬼たちはみな、元人間である。それぞれ兄弟に対して負の感情を抱いているように見えるが、その根本には嫉妬や羨望、憎しみだけではない憧れや尊敬の気持ちがあった。彼らも、誰よりも人間らしい感情で兄弟と接していたのではないだろうか。

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