
吾峠呼世晴氏による人気漫画『鬼滅の刃』ではさまざまな兄弟関係が描かれる。だが主人公の炭治郎と妹の禰豆子をはじめとする、読者に感動を与える兄妹の強い絆だけでなく、いささかいびつで互いに深く憎みあう鬼陣営の兄弟関係もまた悲しく、涙なしには読めないエピソードばかりだ。
今回は、そんな鬼たちによる兄弟のあり方を紹介したい。
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以下ではテレビアニメ第1期以降の内容についても触れております。原作コミックス未読の方はご注意ください。
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■今冬放送開始「遊郭編」の兄妹
まずは12月5日からアニメ放送される「遊郭編」に登場する上弦の陸の鬼・妓夫太郎と堕姫の兄妹。9月25日の『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』テレビ初放送時には、堕姫役として声優の沢城みゆきの出演が発表。現在ではまだ兄・妓夫太郎役は発表されておらず、アニメファンの間ではキャスティング予想も盛り上がりを見せている。
遊郭の最下層で育った、ぱっと見はまったく似ていないこの兄妹には悲しい生い立ちがあった。
兄の妓夫太郎は非常に醜い容姿に生まれ、周囲から蔑まれながら生きてきた。一方、大人がたじろぐほどの美貌をもって生まれた堕姫。二人はともに過ごしてきたが、13歳になった頃、堕姫が客の侍の目玉をかんざしで突いて失明させてしまい、その報復として生きたまま焼かれ、妓夫太郎も厄介払いとして侍に斬り捨てられてしまう。その後偶然、上弦の弐・童磨に出会ったことで、人間への恨みを持ったまま鬼となった二人。妓夫太郎は堕姫の背中に融合し、危機になると這い出るように登場する一心同体の鬼として炭治郎らを苦しめた。
そんな二人が鬼殺隊に敗れた場面では、首だけになった状態でお互いを激しく罵り、死を見届けた炭治郎が思わずとまどうコマもあった。だが実は誰よりも互いを思い合っていた二人。公式ファンブック『鬼殺隊見聞録』では堕姫が客の目玉を突いた理由が妓夫太郎を侮辱されたからだったということや、妓夫太郎が、母親による堕姫への暴力から彼女を救っていたことが明かされている。
最後には「ずっと一緒」と言いながら地獄の業火に消えていったこの兄妹。人間時代の回想シーンに涙した読者は多かったのではないだろうか。