■弟に嫉妬し続けた双子の兄

 上弦の壱・黒死牟も深い因果のある兄妹関係を持つ。彼の双子の弟は始まりの呼吸「日の呼吸」の剣士・継国縁壱。双子が忌み嫌われていた時代に生まれ、自身が後継として期待されていたが、ある日、弟の剣の実力が明らかとなり自身の立場が危ぶまれてしまう。

 しかし兄思いの縁壱がこっそりと行方をくらませたことで巌勝(人間時代の黒死牟の名)の問題は解決。以降は穏やかな日々を過ごしたが、縁壱が鬼に襲われた巌勝を救ったことで、二人は再会することとなる。

 最後まで勝てなかった弟に対して、黒死牟となって以降も何百年にもわたって嫉妬と遺恨を抱え続けた巌勝。縁壱が兄に対してずっと優しく接していたことも、なおさら巌勝のコンプレックスを刺激したのだろう。

 年の近い兄弟において、片方が優れていると嫉妬心に駆られるのは現代でもよくあること。この悩みに共感した人も多いことだろう。これまで兄弟という関係の素晴らしい面ばかりを描いてきた『鬼滅の刃』において、ここまで相手へのほの暗い感情が描かれたのは初めてだった。

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