■縫い直し、意志が引き継がれる羽織

 水柱・冨岡義勇が羽織るのは、右半分が単色のぶどう色の無地、左半分が緑とオレンジの幾何学模様のような柄が入った特徴的な羽織。義勇は伊之助に「半々羽織」と呼ばれるほどの目を引く変わった羽織を着ているが、これは右が祝言の前日に自分をかばって殺されてしまった姉・蔦子の形見で、左が一緒に最終選別を受けた親友の錆兎の形見と、それぞれの生地を合わせたものであることが公式ファンブックで明かされている。

 物語の序盤で炭治郎の前に現れた錆兎の亡霊が彼と同じ柄の着物を着ていることから、連載中から義勇と錆兎の関係を考察をする人も多かったこの着物には、やはり悲しいメッセージが込められていた。なお、錆兎の着物は元は鬼に殺された父の形見のようだ。着物一つをとっても鬼の脅威が長年続いていることを実感し、繰り返される悲しみの連鎖に切なくなってしまう。

 なお、最終決戦でボロボロになってしまったこの羽織は、もともとの形見の布地はかなり減ってしまったものの、禰豆子がきれいに繕ったそうだ。公式ファンブックでは義勇が感動して、禰豆子に着物や髪飾りなどを山ほどプレゼントしたというほっこりエピソードも明かされている。

 また、善逸の師匠である元鳴柱・桑島慈悟郎の形見の着物も、禰豆子がサイズを大きくするために善逸の着物と合わせて縫い直して、生地を少し染め直したそう。禰豆子の優しさに多くの人物が救われたようだ。

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