■及川奈央、釈由美子、杉本彩……妖艶な大人の魅力で迫るセクシーな女幹部たち
これまで美少女タイプの女幹部を紹介してきたが、一方で女幹部にはセクシーな大人の魅力を求める人も多いだろう。
そうしたタイプを体現した近年の代表例といえば、やはり及川奈央をおいて他にない。『炎神戦隊ゴーオンジャー』(2008~2009年)で演じた害水大臣ケガレシアは、その外見とは裏腹に、「~でおじゃる」という語尾やおばさん呼ばわりされるとマジギレしたりするコミカルさも相まって人気となった。及川奈央はその後に映画『仮面ライダーディケイド完結編』(2009年)でも仮面ライダーシリーズのレジェンド級女幹部である蜂女を演じているほか、ゴーオンジャー10周年記念作品のVシネマ『炎神戦隊ゴーオンジャー 10 YEARS GRANDPRIX』でケガレシアを再演しファンを喜ばせた。
そうしたセクシー系女幹部の先駆けとして挙げておきたいのは、『科学戦隊ダイナマン』(1983~1984年)で香野麻里が演じた、ジャシンカ帝国の幹部で帝王アトンの妹の娘である王女キメラだ。にっかつロマンポルノの出演や雑誌のヌードグラビアなどで活動していた香野の体当たりの演技により、子ども向け番組ながら一糸まとわぬ姿で水浴びをするシーンも披露。今ではありえないようなサービスカット満載の演出が当時の男の子たちを驚かせた。
レギュラーの女幹部ではないにもかかわらず強烈な印象を残したのは『仮面ライダージオウ』(2018~2019年)の第35話・第36話で、復讐に燃える悪の女王・北島祐子/アナザーキバとして出演した釈由美子。バトルシーンでなぜかマンホールのフタをブン投げて攻撃したり、盾として防御にも使用するなど、謎の武闘派キャラクター演出が話題となった。その後も釈にはマンホール関連の仕事が舞い込んだりもして「マンホール女優」と称されたりもするなど影響力は計り知れない。
悪の女幹部が登場する特撮作品を挙げると、どうしても仮面ライダーとスーパー戦隊に偏ってしまうが、もちろんそれ以外にも存在する。そのひとつが、2003年~2004年に放送された実写版『美少女戦士セーラームーン』だ。セーラームーン役に沢井美優、セーラーマーズ役に北川景子やセーラーヴィーナス役に小松彩夏が出演するなど、今から考えると超豪華なキャスト陣だったが、ここで悪の王国ダーク・キングダムを統べるクイン・ベリルを演じていたのが杉本彩。胸の谷間を強調した原作そっくりなセクシーな装いは「これぞ女幹部」という堂々たるもので、絢爛たるメインキャストにも匹敵する存在感を示していた。
いつの時代も男の子の憧れは「ちょっと悪い女」であることは変わらない。そんな少年たちの思いを反映したともいえる特撮ドラマの女幹部という存在は、今後も連綿とその系譜を連ねていくだろう。その結果として、いつまでも大人になりきれない……じゃなくて少年の心を失わない僕たちは、毎週日曜日の朝には特撮ヒーロー番組にチャンネルを合わせるのだ。