■馬場ふみか、芦名星、未来穂香……若さのきらめきが印象的だった「悪」のヒロイン
まずは前者、「可憐な美少女タイプ」から何人かピックアップしてみよう。
近年の特撮作品は新人やキャリアの浅い俳優の登竜門という側面もあり、ここから巣立ってその後に大きな飛躍を遂げるケースもしばしば見られる。その代表例ともいえるのが、『仮面ライダードライブ』(2014~2015年)でロイミュードの幹部・メディックの人間態を演じた馬場ふみかだ。黒を基調としたシックなゴスロリ風ドレスを身にまとい、バレエのポーズをとりながら話すのが特徴で、女優デビューから間もない馬場ふみかの初々しい演技もあって多くのファンを魅了した。最後には仮面ライダーたちと共闘し戦いの中で犠牲となり消滅するという悲運も、まさに女幹部の王道というべきもので趣深かった。
モデルとして活躍し、ドラマにも出演していた芦名星は『仮面ライダー響鬼』(2005~2006年)で人の世に害をもたらす悪しき存在・魔化魍を育てる常に二体一組で行動する男女「童子」と「姫」などを演じた。童子は女の声で、姫は男の声で話すため、外見としては姫を、声は童子を受け持つという変則的な出演形態だった。可憐というよりは怜悧といったほうがふさわしいかもしれない。その後も女優として大活躍していたが、昨年9月に亡くなり多くのファンを悲しませた。
『仮面ライダーオーズ/OOO』(2010~2011年)でグリード(怪人)のメズール人間態を演じたのは未来穂香(現:矢作穂香)。水棲系の怪人のため、怪人態では水色のケープっぽいものを肩にかけた姿だが、それを踏襲してか人間態でもおおむね青を基調にした服装で登場する。髪型もサラサラのロングヘアだったため、どちらかといえば清楚な雰囲気を感じさせたのも、悪の怪人が人間に擬態する様としてはむしろリアリティを感じさせた。
ここまで仮面ライダー作品が続いたので次はスーパー戦隊からのセレクト。『獣拳戦隊ゲキレンジャー』(2007~2008年)で平田裕香が演じた悪の組織「臨獣殿」の女幹部・メレは、作品自体が敵にも個としてのドラマ性を持たせて描き、単なる敵というよりは主人公格ともいえる扱いだったこともあって人気を博した。エピソードによってはサンタコスや和服姿を披露したり、コロコロ変わる表情がいかにも少女らしい愛らしさで、雑誌の企画でフィギュア化もされたりもしていて、その人気のほどがうかがい知れる。
アイドル的な人気となった女幹部といえば、『魔法戦隊マジレンジャー』(2005~2006年)のナイ(ホラン千秋)とメア(北神朋美)も同様だろう。並べると「ナイトメア」となるそのネーミングからも分かるとおり、常に一緒に行動する2人は、地底冥府インフェルシアの女スパイである妖幻密使バンキュリアが人間態として分離した姿。ナイはパンク風、メアはゴスロリ風のファッションで2人とも頭に黒い翼をつけた姿で、「どうする、メア?」「どうする、ナイ?」「やっちゃおっか!」という掛け合いもキュートだった。