■遊郭編にも登場する悲しい鬼たち

 最後は、12月5日からのアニメ放送に向けてますます注目を集める「遊郭編」に登場する“上弦の陸”の妓夫太郎と堕姫。兄妹である二人は生まれたときから不幸な境遇にあった。

 兄の妓夫太郎は母親の梅毒の影響で非常に醜い容姿に生まれ、周囲から蔑まれながら生きてきた。いっぽう大人がたじろぐほどの美貌をもって生まれた堕姫は、13歳になった頃、客の侍の目玉をかんざしで突いて失明させ報復として生きたまま焼かれてしまう。公式ファンブックでは、このとき堕姫が目玉を突いた理由は、客に妓夫太郎を侮辱されたからだったということや、妓夫太郎が、母親による堕姫への暴力から彼女を救っていたことが明かされており、二人がお互いを思いやる兄妹だったことが分かる。

「何も与えなかったくせに取り立てやがるのか 許さねえ!」と咆哮する妓夫太郎はその後“上弦の弐”の童磨に出会い鬼になる。どこまでも不幸だった二人が唯一この世で見つけた居場所が、鬼になることだったと考えると切なすぎる。

 ときには鬼よりもむごい行いをする人間たちの業の深さを随所に感じるエピソードの数々。鬼の行動はもちろん賛同できるものではないが、彼らは鬼といえど、必ずしも絶対悪とは言い切れないのではないだろうか。

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