■鼓屋敷で炭治郎らを苦しめた響凱の過去

 続いては、鼓屋敷に登場した元十二鬼月の鬼・響凱(きょうがい)。体に埋め込まれた鼓で屋敷を回転させ、炭治郎らを翻弄した鬼だが、彼にはついぞ日の目を見ることがなかった文筆家としての過去がある。

 アニメ13話で放送されたミニコーナー「大正コソコソ噂話」では人間だった頃から「里見八犬伝」を好み、自身も伝奇小説を書いていたことが明かされた響凱。鬼となった後も文筆家として生計を立てるために頑張っていたが、周囲からの評価は得られず、空しい日々を送っていた。中には、真剣に書いた作品を酷評し原稿用紙を踏みつけた知人もいたという。

 そんな過去があったためか、彼は戦闘中の炭治郎が畳の上に舞う原稿用紙を避けて着地したのを見てハッとする。その後炭治郎に首を斬られた響凱がいまわの際に発したのは「小生の……書いた物は……塵などではない 少なくともあの小僧にとっては踏みつけにするような物ではなかったのだ 小生の血鬼術も……鼓も……認められた……」という言葉だった。涙を流しながら消えていく彼もまた、自身を尊重してくれた炭治郎に救われた一人だったということだ。

 その人の大切にしているものやプライドを粗末に扱うのは、たとえ相手が誰であっても褒められるものではない。ちなみに、響凱は自身を馬鹿にしたその知人を惨殺したという。

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