1984年5月1日に発売された任天堂によるファミコン用ソフト『ゴルフ』は、中年男性をとりこにした名タイトルである。
それまで、コンピューターゲームといえば「若者の遊び」だった。ファミコンもやはり「子どものおもちゃ」で、いい歳をした大人がやるものではないというイメージが少なからずあったが、ドンキーコングやマリオブラザーズといったソフトにまぎれて、父親が自分でプレイするために購入してきた「麻雀」や「ゴルフ」があった家庭は多かったのではないだろうか。
■「ボタン3回押しでワンショット」のシステムを確立
スポーツの競技には「ゲームにしやすいもの」と「しにくいもの」がある。ゲームにしにくい競技といえば、やはりサッカーだ。両チーム合わせて22人がバラバラに走り回り、しかもボールを持つ選手が頻繁に変わる。オフサイドやペナルティーといったルールを再現するのも大変だ。従って、操作の確立にも時間を要した。
一方でゴルフは、能動的なアクションが少ない競技である。ゆえにサッカーよりもゲームにしやすいものではあるが、それを考慮してもFCソフト『ゴルフ』はよくできていた。
まずはショットの操作。ボタンを1回押してクラブを振り上げ、もう1回押して強さを調整、さらにもう1回押してインパクトの左右を決定。つまり「ワンショットに3回押す」ということだが、この操作方法は後のゴルフゲームのフォーマットになった。
さらに『ゴルフ』は、クラブもちゃんと14本そろっている。ティーショットのときは1番ウッドで打ち、フェアウェイのときはアイアン、グリーンに近づいたらピッチングウェッジで上手く乗り上げ、最後はパターでボールをカップに収める。バンカーに入ったらサンドウェッジで脱出するということも可能だ。