■熱血主人公と皮肉屋剣士の不器用な友情と別れ

 続いて『テイルズ オブ デスティニー』を紹介したい。『テイルズ オブ デスティニー』は1997年にプレイステーションで発売され、2006年にPS2でのリメイク版も発売された名作。オリジナル版とリメイク版で異なる点が多々あるが、本記事ではリメイク版に準拠しているので注意いただきたい。

 言葉を話す剣「ソーディアン・ディムロス」のマスターになった田舎出身の剣士・スタンの冒険を描いた本作。今から紹介するのは『テイルズ オブ』シリーズファンの間でたびたび語られる、主人公スタンとシリーズ屈指の人気キャラであるリオン・マグナスの友情に感動する名シーンだ。

 スタンが「神の眼」を取り戻すという任務についたとき、お目付け役として同行したのが剣士のリオンだった。リオンは右目を黒髪で隠した小柄な美少年で、声優は緑川光。非常に不器用でひねくれた性格の持ち主で、まっすぐな性格のスタンは彼のことを「友だち」と呼ぶが、リオンはけして受け入れずにいた。

 そして道中、ある洞窟を抜けるときにリオンがスタンたちを裏切ってしまうのだった。それはリオンが唯一心を開いていたメイドのマリアンを人質に取られていたから。リオンの突然の行動の奥に隠されていた本当の理由を知ったとき、スタンは不満を爆発させた。

「どうして何も相談してくれなかった!どうしてひとりでやろうとした!」
「なんでおまえだけ、辛い思いするんだよ!なんでおまえだけ、傷だらけになるんだよ!」

 最後までリオンのことを「友だち」として心配するスタンに、リオンはあきれながら剣を収める。しかし、突如として洞窟が崩落を開始。敵の狙いはリオンごと全員を殺すことだった。

 出入り口は崩落によって封鎖。一行は工業用リフトで脱出を試みるが、リフトを操作するレバーが離れたところにあり、それを操作するためにリオンが一人で向かった。そしてスタンに最後の言葉を告げる。

「僕はおまえのように、脳天気で、図々しくて、馴れ馴れしい奴が大嫌いだ」
「だから……後は任せた」

 ようやくスタンに心を開いたリオンが濁流に飲まれていくこのシーン。シリーズ初の死亡退場者としてプレイヤーに大きなショックを与えたが、それまで不器用だった彼が、最後は仲間のために死ぬという行動に涙した人は多かったに違いない。

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