1995年に、シリーズ第1作目となるスーパーファミコン用ゲーム『テイルズ オブ ファンタジア』が発売されて以来、根強い人気を誇る『テイルズ オブ』シリーズ。9月9日に、5年ぶりとなる最新作『テイルズ オブ アライズ』(PS5/PS4/Xbox Series X/Xbox One/PC)がいよいよ発売となり、さっそくプレイしているファンも多いことだろう。
『テイルズ オブ』シリーズといえば、アニメ調で描かれる個性豊かなキャラクターや、アクション性の高いバトルシステムが魅力。物語は王道的で、涙なしでは見られない名場面が数多い。最新作をプレイする前に、これまでに描かれた『テイルズ オブ』シリーズの名シーンの思い出に浸りたい。
■感情なき人形からベルベットを守る存在に成長
まず紹介するのは、シリーズ初の単独女主人公が登場した『テイルズ オブ ベルセリア』(2016年)から。
本作は、人や動物が魔物になってしまう「業魔病」が人々を苦しめる世界が舞台。主人公のベルベット・クラウは、村の住人たちと幸せに暮らしていたが、ある日、義兄のアーサーの策略で姉のセリカと弟のライフィセットを殺されてしまい、この事件がきっかけで自身も業魔へと変貌してしまうのだった。
左腕を魔物にされ、復讐の旅に出るベルベットの悲しい物語が描かれる『ベルセリア』だが、個人的には旅の途中で出会った少年「ライフィセット」が成長していく姿に感動を覚えた。
聖隷(せいれい)と呼ばれる種族で、聖隷術を使うためだけに生きているため名前すらもなかったこの少年。ベルベットは、彼にどこか亡き弟の面影を感じ、「ライフィセット」と名づけてともに旅をすることに。
聖隷のライフィセットは感情がない操り人形のような存在。だがベルベットとの旅の中で、少しずつ感情を芽生えさせていく。その感情が思い切り爆発したのが、ストーリー終盤、ベルベットが敵・カノヌシから人生を全否定され、失意のどん底に立たされた場面でのことだった。
カノヌシは弟・ライフィセットを依り代にして転生した“聖主”とよばれる聖隷の上位的存在で、その目的は人々の感情をなくすこと。8つの感情を取り込むことで完全復活をたくらみ、ベルベットからは「憎悪」と「絶望」を取り込もうとした。
ベルベットは「あたしは無意味にみんなを苦しめた化け物です……」と自ら生贄として敵に食われようとするが、それを手を伸ばし、ギリギリのところでライフィセットが救った。
ベルベットの左腕が反応し、手を差し伸べたライフィセットの腕を食いちぎろうとするが、それでもライフィセットは声を荒らげこう叫んだ。
「ベルベットは僕に名前をくれた!僕が生きてるんだって教えてくれた!」
「腕ぐらい喰べていいよ。でも、こっち(片腕)は残しておいて」
「ベルベットを泣かせたあいつを殴ってやるんだから!」
ライフィセットの成長に驚かされたこの場面。それまでは言われるがまま行動していたライフィセットが、初めて自分の意志を爆発させたことに感動して涙したユーザーは多かったのではないだろうか。また、憧れを抱いていたベルベットに対しての告白のセリフにも受け取れる。シリーズでも屈指の名場面だと思う。